筑波山

昔、祖先の大神が、諸国を旅したときのこと、駿河の国で日が暮れてしまった。
そこで富士の神に宿を請ふと、「今日は新嘗(にひなめ)祭のために家中が
物忌(ものいみ)をしてゐるところですので」と断られた。
次に、筑波の山で宿を請ふと、筑波の神は、
「今宵は新嘗祭だが、敢へてお断りも出来ますまい。」と答へ、
よくもてなした。これ以来、富士の山は、いつも雪に覆はれて登ることのできぬ山となった。
一方、筑波の山は、神のもとに人が集ひ、歌や踊りで、
神とともに宴する人々の絶えることは無いといふ。
坂東の諸国の男女は、春に秋に、神に供へる食物を携へてこの山に集ひ、
歌垣を楽しんだといふ。(常陸国風土記)


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